農業共同体見聞録&農業共同体設立記

日本中の農業共同体、農業コミューン、エコビレッジ、農業シェアハウスの訪問記と、東京都西多摩郡檜原村での古民家シェア&ゲストハウスと里山シェアリングの設立記!

農業共同体見聞録14 大鹿ふりだし塾

~訪問記~

 農業共同体見聞録、中部地方編の最初の訪問先は、1970年代以降の日本のコミューン運動の到達点、長野県の山奥で自給自足生活を送る「大鹿ふりだし塾」さんです。

 

【ウェブサイトも開設しました!纏まった情報はそちらに掲載!】

http://matsuokakenji.wixsite.com/nougyoukyoudoutai

 

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・概要

大鹿ふりだし塾は、長野県南部、南アルプス赤石山脈西方の長野県下伊那郡大鹿村鹿塩の山の奥地にある、自分達で建てた家や、無農薬で作った作物、沢水、電気、薪の燃料で(100%ではありませんが)自給自足する生活を送りながら、研修生(お手伝いさん)を受け入れ、彼らとの共同生活を送っている農場です。

 

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母屋のログハウス

 

 山麓の川沿い、国道沿いの集落から、曲がりくねった、最後は舗装もない道を15分程登った標高1300m程の所に、大きな立派なログハウスや研修生の寮、山羊や鶏小屋が立ち並び、山麓の標高800m程の所や、山頂付近の標高1400~1500m程の所に畑があり、何十種類という米や野菜を、無農薬の方法で作っています。

 

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娘さんご夫婦の暮らす旧八角

 

大鹿ふりだし塾のメンバーは、代表者の「げた」さんこと大倉寛さん、奥様のひろみさん、娘さんとその旦那さんとお子さん3人、ふりだし塾の「塾生」で研修生の様な形で住む人が通常2~3人、多い時は7~8人です。

 

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イベントや宿泊が出来る新八角

 

 近年、大鹿村内にふりだし塾と繋がりのある若い移住者、就農者が増えてきていて、ふりだし塾周辺に彼らの家を建て、彼らと農事組合法人を設立し、お互い自立しつつ協力する、という関係を築いています。

 

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山の麓の畑

 

 

・一週間の流れ

11月14日月曜…東京から長野に移動。夜の闇と雨と霧の中、初めての道で、国道なのに急カーブ続きで、すれ違いも出来ない道を走ったり、曲がりくねって入り組んだ山道で迷ったりと、散々でしたが何とか到着しました。

11月15日火曜…秋も終わりなので、畑の片づけのお手伝い。ミニトマトの撤去や人参の収穫をしました。

11月16日水曜…午前も午後も下の畑の片付け。昼休みには大鹿村に移住予定の方の所でお話しを伺いました。昔から大鹿村には移住者が多くて、この方は古民家を買い取り、改修して、新規就農を目指すとの事でした。

11月17日木曜…今日も一日、畑の片づけ。母屋の近くの自給用の菜園を片付け、山の上の方の畑も片付けます。

11月18日金曜…午前はヒエの脱穀を、足踏み脱穀機と「とうみ」という機械でやりました。午後は畑の片づけ。

11月19日土曜…午前は畑の片付け、午後は収穫した「ケツメイシ」という生薬を枝から切り離す作業をして、夕食後、げたさんから、コミューン運動の事、そこから得た教訓、大鹿ナチュラルファームの構想を伺いました。

11月20日日曜…出発。朝食を頂き、昼食のおにぎりを頂き集合写真を撮って、出発しました。

 

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足踏み脱穀

 

 

・一日の流れ

一日の流れは、朝7時頃に母屋に行って、薪ストーブに火を付け、お湯やお茶を沸かして、朝食の準備を手伝って、鶏に餌をやり、朝食を頂きます。午前は9時から12時までお手伝いし、12時から13時までお昼休み。

午後は13時から17時頃まで、15時から30分程の休憩を挟んでお手伝いし、その後は夕食作りのお手伝い。夕食を頂いたら、後は自由時間。げたさんやひろみさんとお茶を飲みながら話したり、本を読んで、眠ります。

ここでは、農業はもちろん、料理や、建築まで、自給自足に関する事は何でも学ぶ事が出来ます!

 

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日本アルプスの山並み

 

・大鹿ふりだし塾について

代表のげたさんは20歳の頃から日本全国のコミューンを放浪し始め、最初は「厚木ふりだし塾」という所に、入り、その後も日本中、世界中を渡り歩いて、1983年、大鹿村の農家さんの家と農地を借りて暮らし始めます。 

1994年に現在のふりだし塾の場所に1ha以上の山林を買い、2年程で八角形のログハウス、「(旧)八角堂」を建設し、2003年に現在の母屋となる大型のログハウスが完成し、げたさんご夫妻はそこで暮らしています。現在、八角堂には娘さんご家族が住んでいて、近年、1ha程の山林を買い足し、新しい八角堂も建設しました。

また、2000年頃から、自給自足生活やログハウスの建築を学びたいという人達が来始め、2003年に「大鹿」ふりだし塾として、そうした人達を「お手伝い」として無償で受け入れ、共同生活する体制がスタートしました。

 そして近い将来、大鹿村農事組合法人「大鹿ナチュラルファーム」を設立する予定です(2016年11月現在)。この法人はげたさんご夫婦、娘さんご夫婦と、ふりだし塾と繋がりがある、大鹿村で新規就農した若い人達が、組合に出資して組合員となり、機械の共同利用や食品加工から始め、生産や研修生の受け入れも目指します。

 この、一人一人は自立しながら、協力できる所で協力する、という形が、若い頃は世界中のコミューンを訪問し、30年近く、農業に取り組んだ、げたさんの考える「農業コミューン」の上手く運営できる形態だそうです。互いが互いに依存せずに自立しつつ、協力した方が効率が良い所は協力する。一軒一軒は農家として独立しつつ、食品加工や機械利用の分野では協力する。「自由」と「協力」を両立する、自立した農業者の、緩やかな連帯で大鹿の農業を守り、若い後継者を育て、将来的には大鹿村を「無農薬農業の村」にしたい、そう語っていました。

 

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別れ際の集合写真